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がりことぐれ猫たち~あんずちゃんと仲間たち3



あんずちゃんが立ち止まった場所は、八百屋さんの前だった。
「ここが、あたちのおばあがいるとこにゃ」
そこは、老夫婦が営む八百屋さんだ。
おばあは、買物に来た近所のおばさんと楽しそうに立ち話をしていた。おじいは、配達にでも行っているようで留守のようだった。

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あんずちゃんは、おばあに挨拶してくると言って、立ち話をしているおばあの足元に喉を鳴らして擦り寄った。
「にゃあ〜にゃあ〜ゴロゴロ、ゴロゴロ、にゃあ〜ゴロゴロ、ゴロゴロ」
お客さんもあんずちゃんとは、馴染みらしく、驚く様子もなく、それはほのぼのとした日常の光景だ。
挨拶を終え、あんずちゃんが戻ってきた。
そして、おばあとの出会いをあたちに話し始めたのだった。

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あんずちゃんは、この店の近くにある空家の物置の中で生まれた。
男の子と女の子の二人ずつの四人兄弟だった。
猫の親離れは、早くも生後二ヶ月を過ぎた頃に始まる。
それまでは、親子はいつも一緒に行動し、仔猫はこの時期に、生きてゆくための基本的なことを母親から学ぶ。ご飯の取り方、危険なものの判断などだ。母親のその一通りの教育が終わると、子どもたちは独り立ちして親離れをする。
いつも一緒にいたことが嘘のように、母親自ら子供たちを自立させるように促すのだ。
母親から離れて、独り立ちしたあんずちゃんは、生まれた空家の近くで生活をしていた。暫くは、兄弟たちと過ごしていた。兄弟は、人の出したゴミの残飯をあさり、人間の誰かが置いていくご飯などを食べて飢えをしのいでいた。
そして何ヶ月かが過ぎ、あんずちゃんは少し大きくなっていた。この頃には、兄弟とも離れ一人で暮らすようになっていた。

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ある日のことだ、あんずちゃんは日課にしているテリトリーの散歩に出掛けた。行き止まりに立つ小さな家の前を通り、裏手の山林に入ると、小さなアパートがある。一軒家とのその間は、いつも通る狭い道だが、そこは土の地面で木と草が生えていて、オシッコをするには都合が良かった。
ある日、そのアパートの前にご飯が置かれていた。
あんずちゃんは、警戒をしたが空腹に負けてそれを食べた。
その日を境に、毎日ご飯が置かれるようになった。アパートに住む人間が、置いてくれていたのだった。
この頃には、あんずちゃんは、母親から教わったことを忘れかけていたのだった。
母親の教えは、『人間には、気を許してはいけない、十分気をつけなさい』というものだ。
あんずちゃんは、完全に警戒することを忘れ、毎日用意されているこのご飯をとても楽しみにするようになっていた。
そんなある日のことだ。あんずちゃんは、いつものようにご飯を食べていた。するとその背後から何者かが忍びよる気配がした。あんずちゃんは、慌てて逃げようとした。その時、全身に鋭い激痛が走った。
横腹をナイフで切りつけられたのだ。小さな体から血が吹き出した。
あんずちゃんは、慌ててその場からやっとの思いで逃げ去った。その背中に、人間の男の罵声が轟いた。
「この野良猫め!いつも勝手に入り込みやがって、迷惑なんだよ!」
あんずちゃんは、しばらく走ったが、痛みに耐えられず、近くの家の庭に入り、縁側の下に身を隠した。
何が起こったのかわからず、胸が張り裂けるようにドキドキと鼓動が止まらなかった。
恐怖と痛みと悲しさで、体がブルブルと震えていた。
その時、また大きな人影が近寄ってきた。
あんずちゃんは、先ほどの恐怖が蘇り、逃げようとしたが、痛みと恐怖で足がすくんだ。

「まあ、びっくりした。こんなとこに猫やないの…」
「おや、お前さん、怪我してるやない、かわいそうに、こんな震えて…」
これが、八百屋のおばあだった。
おばあは、傷ついたあんずちゃんをおじいの運転する車に乗せ、病院まで連れて行き、傷の手当をしたのだ。
あんずちゃんは、病院に行く車の中でも、ずっと震えていた。
おばあは、そんなあんずちゃんを自分の膝に乗せ抱きしめた。
「随分と痛い思いしたなあ〜、でも、もう大丈夫じゃよ」
おばあはそう言うと、思い出したようにあんずちゃんのために歌を歌った。

てぃんからのめぐみ〜、う〜けてこのしげに
生まれたるなしぐわ、わみのむい、すだてぃ
いらよお〜ほい、いらよお〜へい
いらよお〜かなしうみなしぐわ
泣くなよ〜や、へいよお〜へいよお〜
てぃだの光うけ〜てぃ
ゆういりよお〜や、へいよお〜へいよお〜
まささあてぃたぼり〜

「お天道様から頂いた命、大切な命やからな…」
「おばあが守るからな…、スクスク育つんやよ」

その歌は、『童神』という歌で、おばあの故郷、沖縄の子守唄だった。
あんずちゃんは、この歌の意味はわからなかったが、何か温かいものに包まれていくような気分になった。
そして、ほどなく、あんずちゃんの体の震えは止まっていた。

「そや、お前さんに名前をつけたろな」
「女の子だから…、かわいいのがええな…、そやなあ〜」
「そや、あんずがええわ、お前さんは、今日からあんずや…」

あんずちゃんが、おばあのこの歌を歌ってあたちに聞かせてくれた。
あたちは、この歌を聞いて、なぜかしらわからないが涙がこぼれた。
その時に、ふとあの日の記憶が蘇った。
あの日に感じた温かい気持ちを思い出したのだ。

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ちくわ

Author:ちくわ
2010年5月生まれ、茶トラのにゃんこでちゅ。好きな食べ物はおでんの汁にゃ。よろちくわ!

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