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がりことぐれ猫たち~託された最期の伝言




あたちたちが、あたちたちの住む町を見下ろす丘陵に差しかかった頃には、雨はすっかり止んでいた。
遠くにとても綺麗な朝陽が登ってくるのが見えた。
「にゃにゃあ~昨晩の土砂降りが嘘のようにゃ」
ジジくんが言った。
「にゃ、そうにゃん、今日はすっかりいい天気になりそうにゃ」
元気印のチェリーちゃんが続いて言った。
林の中の丘陵を下ると大きな国道に出た。
ここからあたちたちの街までは、2時間ほど歩くことになるが、みんなは、昨夜の疲れが残っていたものの、ある種の達成感もあってか元気だった。
「ちくちゃ~ん!」
その時、遠くからあたちを呼ぶ声が聞こえた。
声の方へ振り返ると、あたちたちを追いかけてあんずちゃんが走ってきた。
「あ、あんずちゃん!にゃ、サブローさんたちは、どうしたにゃ?」
あたちは、昨夜からずっと気になったいたサブローさんたちの姿がみえないので、とても心配になった。
「にゃにゃにゃ、ちくちゃん!サブローさんたちは、朝のご飯を食べにいつもの縄張りに行ったにゃんよ」
「にゃにゃ、っていうとことはにゃ?」
「にゃは、あの人たちは、そう簡単に死なないにゃよ、にゃにゃにゃ」
あんずちゃんはそう言うと、愉快そうに笑った。
あたちたちは、あんずちゃんも交えて、ワイワイガヤガヤとにぎやかに、がりこのいるヨウコさんのマンションに向かった。目の前にがりこのマンションの建物が見えてきた。
あたちたちは、ヨウコさんの部屋へ、いつもの庭の潜入口から入って行った。
今日はとてもいい天気になっていたので、がりこの部屋のウッドデッキのベランダの出入口のガラス戸は開け離れていた。
ゲージの前に敷かれた毛布の上に、横たわっているがりこがいた。
その傍らには、ヨウコさんの姿があった。
「にゃにゃ、にゃん」
すももねえさんが挨拶するとヨウコさんがこちらを見た。
「あら、おはよう!みんな今日も来てくれたのね」
「みゃ…」
「うにゃ…?」
「うん…がりこはどうかって?聞いてるの?」
「にゃはん!」
「昨日と様子は、変わっていないの…さっき、お水をほんの少しだけ飲んだわ…」
ヨウコさんは、そう言うと、がりこの頭を優しくそっと撫でた。
あたちたちは、部屋にあがって、がりこの周りを取り囲んだ。
がりこの細くやせ細った身体は、茶白の艶のない毛が覆っているが、見ると骨と皮だけではないかと思わせるようにさらに肉がなくなっていた。かけられた毛布から出た前足が、時々、電流に刺激されたように何かを掴むようにピクッと動く。顔は、目は見開いているものの焦点が合わず、空(くう)を見ている。
がりこの昏睡状態は続いていたが、その様子は誰が見ても死期が迫っていることを感じとれた。
「先生に連絡して、また往診をお願いしようと思っているの…」
ヨウコさんは、そう言うと壁に掛けられた丸い時計を見た。
「あっ、病院の診療時間になったようね。電話してくるわね。」
ヨウコさんが電話のある居間に向かい、がりこの部屋から出て行った。
「シャ!ちくわ、それを早くにゃ」
「にゃにゃ、わかったにゃ」
あたちは、すももねえさんに促されると、身体に巻きつけてあった、絵を解いて広げた。
そして、それをがりこの虚ろな顔の前に良く見えるように広げた。
「がりこ!聞こえるにゃ?」
「これを見るんにゃ!」
がりこに反応はなかったが、すももねえさんは、お構いなしに話を続けた。
「この絵は、がりこ!あんたの絵にゃんにゃ!」
「これはにゃ、はるえさんのいた所にあったものにゃんにゃ」
「がりこ!はるえさんにゃ、聞こえるにゃ?は、る、え、さん!」
この時、がりこの前足がピクッと動いた。
「あたしたちは、はるえさんを探しだしたんにゃ」
「はるえさんは、老人ホーム、人間のお年寄りが生活する家にいたんにゃよ」
「はるえさんは、家で倒れて、病院からそのままそこに行くことになったから、あんたのことをどうすることもできなかったんにゃ」
チョコねえさんが、はるえさんの老人ホームに入所した経緯を話した。
「がりこしゃん!だからにゃ、がりこしゃんは、はるえさんに見捨てられたんじゃ、なかったんにゃ!」
「幼稚園児のゆいちゃんに書いてもらった、がりこしゃんのこの絵を毎日眺めて、がりこしゃんのことを心配していたんにゃってにゃ!」
「な……」
あたちの話を聞いて、がりこが声を出そうと力を振り絞ったのがわかった。
「がりこ!残念なことだけど、はるえさんは…」
すももねえさんが、はるえさんが亡くなったことを伝える話をはじめた。
あたちには、がりこの虚ろな目の奥がキラッと光ったように見えた。
すももねえさんが、少し躊躇して話を続けた。
「あたしたちが、会いに行った前日に亡くなったそうにゃ…」
がりこの焦点の合わない目から、一筋の涙が溢れ落ちた。
「が、がりこしゃん…」
あたちは、思わず、がりこに声をかけた。
「がりこ!あたしは、がりこ、いや、はるこ宛に、はるえさんから伝言を頼まれたんにゃ」
「はるこに会うことが会ったら、伝えて欲しいっていう伝言にゃんにゃ」
「………」
すももねえさんの話に、がりこからの返事はなかったが、精一杯聞こうとしているのがわかった。
すももねえさんがはるえさんからの伝言を伝えた。
「シャ!はるこ!はるえさんからの最期の伝言にゃ…」
「うれしい時も、悲しい時も、どんな時もいつも側にいて支えになってくれた、大切な家族のはるこへ…」
「あ、り、が、と、う」
「なあ……」
がりこが、最後に声を発した。そして、そのまま、ゆっくりと目を閉じた。

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ちくわ

Author:ちくわ
2010年5月生まれ、茶トラのにゃんこでちゅ。好きな食べ物はおでんの汁にゃ。よろちくわ!

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