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がりことぐれ猫たち~引出し猫

おいたち
シャンプーして綺麗になったあたち

あたちはおばちゃんと一緒に暮らすようになって3年ほどになる。
すももねえさんやぐれ猫仲間たち、みんな小さな頃に人間から保護され人間と暮らすようになった。
あたちもあんずちゃんと同じで、母親から独り立ちして暮らしていた頃に人間に保護されたのだ。
あたちが暮らしていたのは、小さな公園の物置の下だ。ご飯はゴミ置場が近くにあったので、そこに置かれた残飯が主だったが、カラスとの奪い合いがあるので、小さなあたちには危険も伴っていた。何とか飢えを凌ごうと、このあたりを散策して、一軒の寿司屋さんを見つけた。その店からでる残飯には、アルミホイル、木屑なども混じっていたが、あたちはそれまでも口に入れた。あたちは生きていくために必死だったのだ。
食べ物屋の近くでは、人の目につきやすかったので、ある日、誰かが通報し、あたちのことを人間が捕まえにきたのだ。
あたちは、網を持った大きな人間の男に追いかけられた。狭い路地に駆け込み、アパートの壁をよじ登り、必死に逃げたが力尽きたあたちは、逃げ切ることができずに捕まってしまった。
人間に捕まったあたちは、小さな引き出し型になっているファンシーケースの中に入れられた。
その中には、牛乳と煮干しが入っていたが、恐怖でパニックに陥っているあたちにとって、それは無用な物だった。
暗いケースの中から脱出しようと、出口を探して必死になった。爪をたててプラスティックの壁を引っ掻いた。身体をぶつけてもがいたが何ともならなかった。そのうち箱の中の牛乳がこぼれ、身体が濡れた。グッショリとなった身体は寒さのためと恐怖でガタガタと震え続けた。ケースは車に乗せられ、どこかに向かって走り出した。
車の中の人間が誰かと話をしているのが聞こえてきた。この頃は、まだ人間の言葉がわからなかったあたちだが、“保健所”という響きが、あたちの恐怖を更に大きくした。
「おかあちゃん!助けて!」
悲しくて怖くて何度も叫んだが、そのうちに濡れた身体が体温を奪い、意識が遠のいていった。
そして、車が着いた所は保健所ではなく、あのぐれ猫病院だったのだ。


病院からおばちゃんの家に行くまでのお披露目
「ちかれた〜もう勝手にしてにゃ…」無抵抗なあたち

「ようこそ!引き出し猫ちゃん!」
ぐれ猫病院の先生は、そう言って、あたちを抱き上げた。
その温かい手に包まれた時、何故だかわからないが、あたちは安堵した。
ここは大丈夫だと直感したのだった。
あたちたち猫は、危険な者、安心な者、野生の感性で敏感に感じとることができる。
あんずちゃんのおばあもぐれ猫先生と同じで、“いのち”あるものに隔たりなく、限りない愛情を持っている人のひとりなのだ。

あたちは、ぐれ猫病院で、蚤だらけの身体を綺麗にシャンプーしてもらい、悪い病気ないかどうか検査をし、美味しいご飯をいただき、これまでの野良猫生活からは考えられないような、安心した生活を送るようになった。

そんなある日、ぐれ猫病院の待合室にあるゲージの中で、お昼寝をしているあたちを抱き上げる人間がいた。
薄目を開けたあたちと目が合ったその人間は、満面笑みを浮かべていた。
「ちくわや〜、探してたんだよね。ちくわを…」
これがあたちと一緒に暮らしているおばちゃんとの初めての出会いだった。
おばちゃんはあたちの里親となって、あたちを自分の家に連れて帰ったのだった。





生後2ヶ月頃、家での一コマ

「にゃにゃ!そろそろ時間にゃわ!」
「ちくちゃん、一緒に行こうにゃ!」
あんずちゃんの話しから、小さな頃の回想をしていたあたちにあんずちゃんが話しかけた。
「あんずちゃん、これから何処に行くにゃんて?」
我に返ったあたちは、あんずちゃん言ったことがわからなかったが、そのまま着いて行くことにしたのだった。


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がりことぐれ猫たち~あんずちゃんと仲間たち3



あんずちゃんが立ち止まった場所は、八百屋さんの前だった。
「ここが、あたちのおばあがいるとこにゃ」
そこは、老夫婦が営む八百屋さんだ。
おばあは、買物に来た近所のおばさんと楽しそうに立ち話をしていた。おじいは、配達にでも行っているようで留守のようだった。

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あんずちゃんは、おばあに挨拶してくると言って、立ち話をしているおばあの足元に喉を鳴らして擦り寄った。
「にゃあ〜にゃあ〜ゴロゴロ、ゴロゴロ、にゃあ〜ゴロゴロ、ゴロゴロ」
お客さんもあんずちゃんとは、馴染みらしく、驚く様子もなく、それはほのぼのとした日常の光景だ。
挨拶を終え、あんずちゃんが戻ってきた。
そして、おばあとの出会いをあたちに話し始めたのだった。

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あんずちゃんは、この店の近くにある空家の物置の中で生まれた。
男の子と女の子の二人ずつの四人兄弟だった。
猫の親離れは、早くも生後二ヶ月を過ぎた頃に始まる。
それまでは、親子はいつも一緒に行動し、仔猫はこの時期に、生きてゆくための基本的なことを母親から学ぶ。ご飯の取り方、危険なものの判断などだ。母親のその一通りの教育が終わると、子どもたちは独り立ちして親離れをする。
いつも一緒にいたことが嘘のように、母親自ら子供たちを自立させるように促すのだ。
母親から離れて、独り立ちしたあんずちゃんは、生まれた空家の近くで生活をしていた。暫くは、兄弟たちと過ごしていた。兄弟は、人の出したゴミの残飯をあさり、人間の誰かが置いていくご飯などを食べて飢えをしのいでいた。
そして何ヶ月かが過ぎ、あんずちゃんは少し大きくなっていた。この頃には、兄弟とも離れ一人で暮らすようになっていた。

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ある日のことだ、あんずちゃんは日課にしているテリトリーの散歩に出掛けた。行き止まりに立つ小さな家の前を通り、裏手の山林に入ると、小さなアパートがある。一軒家とのその間は、いつも通る狭い道だが、そこは土の地面で木と草が生えていて、オシッコをするには都合が良かった。
ある日、そのアパートの前にご飯が置かれていた。
あんずちゃんは、警戒をしたが空腹に負けてそれを食べた。
その日を境に、毎日ご飯が置かれるようになった。アパートに住む人間が、置いてくれていたのだった。
この頃には、あんずちゃんは、母親から教わったことを忘れかけていたのだった。
母親の教えは、『人間には、気を許してはいけない、十分気をつけなさい』というものだ。
あんずちゃんは、完全に警戒することを忘れ、毎日用意されているこのご飯をとても楽しみにするようになっていた。
そんなある日のことだ。あんずちゃんは、いつものようにご飯を食べていた。するとその背後から何者かが忍びよる気配がした。あんずちゃんは、慌てて逃げようとした。その時、全身に鋭い激痛が走った。
横腹をナイフで切りつけられたのだ。小さな体から血が吹き出した。
あんずちゃんは、慌ててその場からやっとの思いで逃げ去った。その背中に、人間の男の罵声が轟いた。
「この野良猫め!いつも勝手に入り込みやがって、迷惑なんだよ!」
あんずちゃんは、しばらく走ったが、痛みに耐えられず、近くの家の庭に入り、縁側の下に身を隠した。
何が起こったのかわからず、胸が張り裂けるようにドキドキと鼓動が止まらなかった。
恐怖と痛みと悲しさで、体がブルブルと震えていた。
その時、また大きな人影が近寄ってきた。
あんずちゃんは、先ほどの恐怖が蘇り、逃げようとしたが、痛みと恐怖で足がすくんだ。

「まあ、びっくりした。こんなとこに猫やないの…」
「おや、お前さん、怪我してるやない、かわいそうに、こんな震えて…」
これが、八百屋のおばあだった。
おばあは、傷ついたあんずちゃんをおじいの運転する車に乗せ、病院まで連れて行き、傷の手当をしたのだ。
あんずちゃんは、病院に行く車の中でも、ずっと震えていた。
おばあは、そんなあんずちゃんを自分の膝に乗せ抱きしめた。
「随分と痛い思いしたなあ〜、でも、もう大丈夫じゃよ」
おばあはそう言うと、思い出したようにあんずちゃんのために歌を歌った。

てぃんからのめぐみ〜、う〜けてこのしげに
生まれたるなしぐわ、わみのむい、すだてぃ
いらよお〜ほい、いらよお〜へい
いらよお〜かなしうみなしぐわ
泣くなよ〜や、へいよお〜へいよお〜
てぃだの光うけ〜てぃ
ゆういりよお〜や、へいよお〜へいよお〜
まささあてぃたぼり〜

「お天道様から頂いた命、大切な命やからな…」
「おばあが守るからな…、スクスク育つんやよ」

その歌は、『童神』という歌で、おばあの故郷、沖縄の子守唄だった。
あんずちゃんは、この歌の意味はわからなかったが、何か温かいものに包まれていくような気分になった。
そして、ほどなく、あんずちゃんの体の震えは止まっていた。

「そや、お前さんに名前をつけたろな」
「女の子だから…、かわいいのがええな…、そやなあ〜」
「そや、あんずがええわ、お前さんは、今日からあんずや…」

あんずちゃんが、おばあのこの歌を歌ってあたちに聞かせてくれた。
あたちは、この歌を聞いて、なぜかしらわからないが涙がこぼれた。
その時に、ふとあの日の記憶が蘇った。
あの日に感じた温かい気持ちを思い出したのだ。

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がりことぐれ猫たち~あんずちゃんと仲間たち2

あたちは、あんずちゃんの先導で商店街を歩き始めた。
日用品を扱う雑貨店の前を通りかかった。その時、二人の気配に気づいて、中から誰かが出てきた。
キジシロの男の子だ。
「やにゃあ~勘助!儲かってるにゃ?」
「にゃ!ぼちぼちやにゃあ~」
あんずちゃんがキジシロ君に声をかけた。
勘助くんは、このお店の二代目でこの商店街の近くにある女子高校の生徒たちの人気者だ。







勘助くんの雑貨店を後にして、少し進んだ所であんずちゃんは急に立ち止まった。
「あにゃ!」
後を続くあたちと危うくぶつかりそうになった。
あんずちゃんが立ち止まった所は、クリーニング店の前だ。
店の窓ガラス越しに、三毛子ちゃんが見えた。お気に入りの椅子に座って、幸せそうに寝ている。
「ほにゃ!ちくちゃん見てにゃ、こいついっつも寝てるんにゃ」
「おい!こにゃ!ホワイトってば!起きれにゃ!」
あんずちゃんが窓ガラスをねこパンチで叩いたがホワイトちゃんは、一向にお構いなしに爆睡中のようだ。



クリーニング店から更に進むと、中華屋さんに着いた。店の前にふっくらとしたサビちゃんがお店のオープンを待っていた。
「あにゃ!ななちゃん!食べ過ぎると益々おデブになっちゃうにゃ」
あんずちゃんが声をかけた。
エアコンの室外機の上には、ななちゃんの姉妹の黒白ねこのウランちゃんが見えた。





「そうにゃ!ちくちゃん喉乾かないにゃ?」
あんずちゃんはそう言うと、表通りから狭い路地裏に入った。
そこには、今はあまり見かけなくなった、古めかしい看板が置かれていた。
そこは、『マリン』という店名の古い喫茶店だ。
その看板の脇には小さな花壇があり、その隅に気の箱が見えた。その中から、黒白ねこがにゅうっと顔を出した。
「あにゃ~あんずちゃん、お友だちといっしょお~」
「愛子ちゃん、お水頂戴にゃ」
「にゃ~あ、どうぞお~」
「あんずちゃん…愛子ちゃんてにゃ?」
どう見てもがっちり系の雄猫なのに、あたちは不思議に思って、あんずちゃんに尋ねた。
喫茶店『マリン』の人気者の愛子ちゃんは、最近猫界でも増えてきたお姉系のにゃんこだ。
「あにゃあ~あたしの大好きなお父さんにゃわ~、さにゃあ~お店行かなくちゃあ~」
愛子ちゃんはそう言うと、とても嬉しそうに、店内に入って行った。





喉の渇きを癒したあたちたちは、再びもとの表通りに戻った。
「あんずちゃん、みんなもそれぞれにお家があるんにゃね」
「家というよりはにゃ、あたしたちはこの商店街で暮らしているんにゃ」
「ちくちゃんのように、人間の里親がいて、その人間の家で暮らしていることにゃにゃいんにゃ」
「人間と一緒に生きているってとこは同じにゃけどにゃ」
「ちくちゃんも手術はしたにゃん?」
「手術?避妊手術にゃらしたにゃんよ」
「あんなことは、人間が決めたことにゃ、あたしは、二度とごめんにゃ!」
あんずちゃんが吐き捨てるように言った。
人間と安全に暮らすには、人間が決めたルールに従わなくてならない。
あたちたちは、野生の繁殖機能を失う代わりに安全な生活を手に入れるのだ。
あたちたちは、そんな話をしながらそのまま暫く歩いていた。
その時、あんずちゃんがまた立ち止まった。

がりことぐれ猫たち~あんずちゃんと仲間たち~



あたちが地域猫のあんずちゃんと頑固に野良道を貫いているサブローさんに出会ったのは、ある商店街をふらついている時のことだった。その商店街は近くにできた大型量販店の進出で今ではすっかり寂れた商店街だった。
あたちはお腹が空いていたので、良い匂いのする方に自然と足が向かっていた。そして辿りついた先は、お蕎麦屋さんの店の前だった。



そのお蕎麦屋さんは、お昼の時間でもあったので、店のガラス越しに何人かの人影が見えた。
あたちは何か食べるものがないかと、店の裏側に廻った。その時、勝手口のドアが開いて人が出て来た。あたちは慌てて側に置いてあった積まれたビールケースの脇に身を沈め隠れた。
はじめて会う人間は、どんな人間であるかわからないので、警戒するにこしたことはない。
勝手口から出て来た人は、その入口に置かれた野菜の入った箱を持って、店の中に戻って行った。
何も食べるものが無かったので、その場から立ち去ろうと、体を起こして方向転換した時、あたちの頭に何かが触った。見上げるとそれは掲示板を支える白い支柱だった。
その掲示板には、町内会のお祭りや小学校でのバザー開催を案内するポスターが掲示されている。その横に何かの写真が数枚貼られている掲示物も見えた。あたちは不思議に思って、それが良く見えるように、側に置かれた自転車に飛び乗りその掲示物を見つめた。
「これは…何にゃろにゃ?」
よく見るとその写真は、数頭の猫の顔写真だった。
あたちが不思議そうにその掲示物を覗き込んでいるその時、誰かに声をかけられた。



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「あんた誰にゃ?この辺りでは見ない顔にゃね」
「あにゃ!こんにちにゃ、あたちはちくわにゃ」
声のする方を見ると、キジサビ猫があたちを見上げていた。
あたちはその顔を見てハッとした。
その猫の顔は、掲示板に貼られている数頭の写真の中の一人だったからだ。
「何をそんなにびっくりしているんにゃ?」
「だ、だってにゃ、この写真にゃ…」
「にゃあ、それはあたしにゃ、他の写真は、あたちの仲間にゃ」
「にゃ、にゃ!な、なかま、にゃんて!」
あたちは、キジサビちゃんのこの言葉を聞いて、一つの想像が頭に浮かんだ。
そう思った瞬間、あたちの胸の鼓動が激しくなるのがわかった。
あたちは、キジサビちゃんがそうであるとわかってびびってしまったが、勇気を出して聞いみることにした。
「キ、キ、キジ…サビちゃんは、な、なにか…悪いことをして、逃げてるにゃん?」
「にゃ、にゃ、悪いこと?にゃんて?」
キジサビちゃんは、とても不思議そうに答えた。
あたちは、続いてあたちの思い込んでいることを口にした。
「そ、そうにゃ、たとえば、お魚屋さんのお魚を、ご、強奪したとか…にゃ」
「にゃあ〜、魚屋強盗にゃって!にゃ、はははは!」
キジサビちゃんは、お腹を抱えてとても愉快そうに笑った。
「にゃ、何でそんなこと思ったんにゃ?」
「だ、だってにゃ、この写真のにゃんこたちは、猫の凶悪犯の…指名手配写真にゃ!」
「これはにゃ、『魚屋強盗団』メンバーにゃん!」
あたちは、思っていることを遂に言い放った。
「はにゃあ〜、にゃ、にゃ、にゃ、にゃあ〜」
あたちのビビリをよそに、キジサビちゃんは、また愉快そうに大笑いした。
「ちくわちゃんだったよにゃ…面白いこと言うにゃね」
「あたちは、あんずにゃ、よろしくにゃ」
「にゃ、残念ながら、指名手配の凶悪犯じゃないけどにゃ」
あんずちゃんは、そう言うとくすっと笑った。



あんずちゃんは、この商店街で暮らす地域猫の一人だ。
町の野良猫の対策として、地域猫という活動がある。
野良猫の雌は、放っておくと一年の春と秋の二度出産をする。雌は、一度に3,4匹の仔猫を産むので、何かしら方策を講じないと、野良猫の数は、毎年増え続けていくことになる。
野良猫は、人間のゴミ置き場の残飯を荒らす、人の家の庭に入り込んで、うんちやおしっこをする。また、発情期の声がうるさい、交通事故に巻き込まれるので危険などの問題を引き起こすとされている。
地域猫とは、地域に住んでいる野良猫を排除して、これらの諸問題を解決するという考えではなく、野良猫と人間が同じ町で共生していくという考え方で、その活動は、野良猫を捕まえて避妊、去勢手術を施し、その後、その町に戻し食事や排泄場所を設置、その清掃や猫の管理を人間がすることである。
猫の避妊、去勢が済んだ目印として、耳の先端を少しカットして、済んでいない猫と区別する。避妊、去勢された野良猫は、一代限りで寿命をまっとうするので、野良猫の数は徐々に減っていく。
現在、全国で多くの動物愛護団体、NPO法人、ボランティアなどの様々な団体がこのような活動を行っている。
あんずちゃんの暮らす商店街では、自治体がこの活動に協力しているということだ。
掲示板に貼られた猫たちの写真は、地域の住民に地域猫の活動の趣旨や地域猫となった猫を紹介し、住民に認識してもらうために、市民有志の団体によって作成され、貼り出されたものだった。

「ちくちゃん、ここははじめてのようにゃね」
「これから、あたしが凶悪犯たちを紹介してあげるにゃ」
あんずちゃんは、そう言うと、ふふっと笑ってウィンクをした。
「そうにゃ、まずはここからにゃ」
あんずちゃんが蕎麦屋の裏口の窓に飛び乗った。あたちも後に続いた。
窓からは、お店の中が見渡せた。
「にゃ〜あ」
あんずちゃんが一声鳴くと、その声に反応して、部屋の窓枠に何かが現れた。
「にゃ、にゃ〜にゃあ」
それは見るとキジトラの長毛種だ。
「蕎麦屋の看板娘、こゆきちゃんにゃ」
あたちは、こゆきちゃんに挨拶を済ませると、商店街を歩だしたあんずちゃんの後を追った。

がりことぐれ猫たち~ボロ雑巾の地域猫2~


通りかかる人に寄り添うがりこ

がりこは一体何処から来たのか。
あたちたちのように人間に飼われているのか、それともこのあたりの野良猫なのか。
ちょっと見たところでは、雌猫ということはわかりましたが、年寄りなのか、仔猫を少し過ぎた頃なのか。そしてどうしてあのように傷だらけで肋骨がでるほど痩せ細ってしまったのか。
がりこに関しては、本当にわからないことばかりでした。
そんなミステリアスのある反面、とても憎めないひょうきんな顔と人懐こい性格は、あたちたちの誰にもない性格で、人間にすると、一度出会ったら忘れることのできない猫となっていたのでした。

がりこの現れた寿司屋の駐車場は、住宅街の一角にありましたが、そこには小さな会社の事務所もいくつかありました。
その中の一つに、小さな設備会社の事務所があり、それはあたちたちの集会場の駐車場に隣接していました。
その小さな営業所は、従業員が4、5名ほどで、その社員たちは、日中は営業に出ているため、事務所には留守番の事務員さんが一人いました。
がりこは、この営業所のある場所を中心に、このあたりをうろうろして過ごしていました。
このあたりは駅に近く、また大きな園芸店もあり、人通りは多いほうでした。
がりこは、疲れてこの付近の道端に横たわっていることが殆どだったので、ここを通りかかる人たちは、その衰弱した姿を見かけては、びっくりして足を止めました。
そして、がりこが出現して何日か過ぎた頃には、がりこの存在は、この辺りでは有名になっていきました。
がりこのためにと、ご飯、お水を置いていく人たちもいました。朝晩様子を見に来る人たちもいました。
この人たちは、がりこが衰弱していることを心配してのこともありますが、がりこは、その人たちだけでなく誰にも分け隔てなく、愛嬌たっぷりに接するので、一度関わったら放っておくことのできないオーラを放っていたのかもしれません。
このように、がりこの周りには、いつも誰か人が立ち止まっていたので、その人たちで、次第にを声を掛け合うようになっていきました。
がりこのことを心配し、どうしたあげたらいいのか、これがみなに共通することでした。





設備会社の留守番の事務員のヨウコさんもその中の一人でした。
出勤したヨウコさんに毎日のようにご飯とお水をもらうようになったがりこは、ヨウコさんにすっかり馴染んでいきました。
がりこは、ヨウコさんが朝出勤すると挨拶に来るようになりました。
夕方、退社し帰ろうとすると、「帰らないで」と訴えました。


「おはようございますなぁ…」
きちんと挨拶のできる律儀ながりこ


「お家に連れてってなぁ…」
帰らないでと懇願するがりこ

ある日、突然現れたがりこは、ここで地域猫のようになっていきました。
プロフィール

ちくわ

Author:ちくわ
2010年5月生まれ、茶トラのにゃんこでちゅ。好きな食べ物はおでんの汁にゃ。よろちくわ!

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